権利関係
敷地が接する隣同士の利害関係を調整するため、双方の所有者または利用者が互いに自分の権利などを制限する関係を「相隣関係」と言い、民法で一定のルールを定めています。
この相隣関係によるトラブルは、互いの利害関係が相反するため、解決の糸口を見つけるだけでも非常に困難なものです。
つまり、一度発生すると、解決するまでには大変な時間とお金がかかるものなのです。したがって、トラブルが起こらないよう、事前に十分なチェックを行ってから、売買契約を結ぶようにしましょう。
それでも、トラブルになってしまった場合は、話し合いにより解決せざるを得ないので、感情的にならず冷静な対応を心がけてください。
トラブルの主な原因と解決策
Case1;
敷地境界線がはっきりしていない場合
売主には、買主に対して境界の明示義務がありますが、これは必ずしも測量に基づくものでなければならないといったものではありません。したがって、境界標や杭などがない場合には、売主の示す境界線の信憑性に注意が必要です。
もし、境界線が曖昧な状況であれば、売主の協力を得て測量(隣地所有者が立ち会う確定測量)を行いましょう。
なお、この際、引渡前であれば売主の費用負担で行うのが一般的です。
Case2;
敷地の中に赤道(国有地)が含まれている場合
赤道とは、公図上に存在する無地番の道路(あるいは、以前、道路であった)のことを意味しています。この道は、道路法による道路ではありませんが、国有地であるため、その上に住宅などを建築することは出来ません。
もし、敷地内に赤道が通っている場合には、道路についての用途廃止等の所定の手続きを経て、国からの払い下げ申請をしましょう。
Case3;
他人が敷地の一部を利用している場合
他の人が土地の一部を利用する権利としては、地上権や賃借権、地役権が考えられます。
地上権や賃借権の場合は、いわゆる借地権としてその土地を利用している状況ですから、建築物などの所有を目的として他人の土地を利用していることになります。
地役権は、自分の土地の便益のために他人の土地を利用する権利です。
例えば、袋地に暮らす人が他人の土地の一部を通行することで道路へ出られるようにしているような状況の場合に権利の設定が考えられます。
いずれの場合も、権利関係を明確にし、利用者との間で契約を取り交わすなどの対策を講じましょう。
Case4;
隣家からの越境物(樹木など)がある場合
敷地が接する隣同士に生じる権利・義務の関係については、民法で規定しています。これを相隣関係と言います。
もし、竹木の枝が境界線を越えて伸びてきたときは、隣人はその所有者に対して枝の剪定を求めることができます。
また、枝ではなく、根が伸びてきた場合には、自らこれを採取することができるとされています。
Case5;
隣家からの排水が敷地内に流れ込む場合
隣地からの排水についても、民法の相隣関係でルールを定めています。
もし、敷地の高低差などから生じる自然排水であれば、それを妨げることはできません。
ただし、造成工事などによる場合は、排水設備の設置を相手に請求することができます。また、工作物による排水の場合は、撤去してもらうようにしましょう。
地盤の状態
地震大国と言われる我が国では、地盤についても十分に注意をする必要があります。どんなに頑強な建物を建てても、その土台を支える地盤が弱ければ意味がありません。
例えば、土地の名称に田、川、谷などの言葉が含まれていれば、大昔の土地の状況を表していることもありますから、地盤の強度を推測することが出来たりします。
また、薬品を使うような店舗(クリーニング店など)や工場跡地に住宅を建築する場合には、土壌汚染にも注意をする必要があります。
もし、地盤に不安があれば、調査を行い必要に応じて地盤改良工事を施してから、建築するようにしてください。
トラブルの主な原因と解決策
Case6;
周辺のよう壁に亀裂が目立ったり、家の基礎が地面から浮き上がっている場合など
地盤調査をした上で、必要な場合は地盤改良工事を行いましょう。
なお、費用については、地盤に不具合が発見された時に誰が負担するのかを契約時に取り決めておいたほうがトラブル防止に役立ちます。
Case7;
山を造成して平坦にした土地の場合
盛土か切土かによって地盤強度が異なるため、造成方法を確認しましょう。もし、盛土である場合は、杭を打つなどの対策を検討する必要があります。
Case8;
土壌汚染が気になる場合
以前あった建物の種類や用途を住宅地図や近隣への聞き込みなどで調査しましょう。
埋設物の状況
トラブルの主な原因と解決策
Case9;
隣家の水道管やガス管などが自己の敷地内を通っている場合
隣家の人に配管の引き直しをしてもらいましょう。
Case10;
以前埋設された地下室や浄化槽などが残っている場合
埋め立てて、地盤改良を施しましょう。
Case11;
遺跡などが埋設されている可能性がある場合
教育委員会などに申請してから建築を行います。
建築物の規模によっては、試掘が実施される場合もあり、着工時期に大きく影響する場合もあります。
Case12;
インフラ整備(ガス・水道)がされていない場合
道路所有者の許可を得てから、工事の申請を行います。
特に私道に接する敷地の場合、承諾に際して金銭の負担が生じる場合もありますので、契約前に道路の通行や掘削に関する無償承諾書を取得しておくといいでしょう。