それでは、家の敷地と道路の間にこのような水路がある場合はどうなるのでしょうか?
敷地の前面が接しているのは水路(および隣地)だけで、他の部分でもまったく道路に接していなければ、建築基準法による接道義務を満たしていないことになります。
しかし、このような敷地で建築を制限することは不合理なため、それぞれの自治体で一定の基準を定め、「水路占有許可」を得たうえで2m以上の幅の通路を設けることなどにより建築が認められるケースが大半です。
自治体(特定行政庁)によって、あるいは水路の幅によって、許可自体が不要として取り扱われる場合もあります。ただし、通路や橋の構造や幅についてはそれなりの制限を受けることになるでしょう。ロープにぶら下がって水路を渡るような構造が認められないことは当然です。
住民専用の橋を架けることにより、ある程度の幅を有する川の場合であっても同様に建築が認められることもあります。
その一方で、昔の水路の跡地や、自然の水路に沿った帯状の湿地が「遊歩道」として整備されていることも少なくありません。
都市再開発などによって新たに造られた遊歩道は別ですが、以前は自然にできた水路だったような遊歩道は、水が集まりやすい地形で、地中の水分量が多く、地盤も回りに比べて弱いことが少なくありません。このような遊歩道に接する敷地の場合は、その地盤に注意が必要です。
都市部では、以前の水路部分にふたをした「暗渠(あんきょ)」として残っている例も数多くみられます。一見すると道路のようであっても、車道部分の幅に比べて歩道が異様に広いようなときは、かつて水路だった(あるいは現在も地下が水路になっている)可能性が高いでしょう。
狭い道路にもかかわらず歩道がある場合、さらにその歩道部分へ車が乗り上げないように保護されている場合なども、水路跡地であることが推定されます。
水路の跡地(または現況の地下水路)を含む道路では、その全体が建築基準法上の道路として認定されている場合と、道路は道路、水路は水路として別々に管理されている場合があるので、十分に注意しなければなりません。
全体が建築基準法上の道路として認定されておらず、道路外の水路(跡地)部分だけに接する敷地の場合には、見た目はどうであれ、やはり接道義務を満たしていないことになります。
このとき、その敷地における建築の可否は、建築基準法第43条のただし書きが適用されるかどうかにかかっています。
周囲の状況で特段の問題がなければ認められる可能性が高いものの、絶対とはいえませんから、このような敷地の購入を検討するときは慎重に対応しなければなりません。上記の遊歩道だけに接する敷地の場合も同様です。
通常のアスファルト舗装ではなく、タイルや石を敷き詰めた道路の場合も、以前は水路であったケースが考えられます。ただし、街並みの景観向上の一環としてタイル貼りの道路にしている場合もありますから、周囲の状況と照らし合わせながら考えることも必要です。
以前は自然にできた水路だった遊歩道の場合と同様に、水路に接する敷地の場合には、現在も水が流れているかどうかに関わらず、地盤への配慮が必要です。まわりに比べて地盤が軟弱なこともあるでしょう。
事前の地盤調査をしっかりと実施し、その結果に見合った建物の基礎対策などを講じればたいていは大丈夫です。しかし、地下室などを造ろうとして地面を深く掘ったときに、水が湧き出てきて想定外の対策費用がかかるようなケースもあるため、慎重な対応が欠かせません。
水路や遊歩道に接する土地や住宅を購入する際には、建築確認の可否(道路認定の問題)と地盤強度の2つについて、事前に十分なチェックをすることが大切です。